バイク購入までの軌跡2
僕が初めてのバイクを買った時の浮き沈みするお話。全7回です。こちらのページ下部で一覧を用意しています。
女性からのお誘いは楽しそうだ、という考え方
描いたシナリオ「工場で10万ぐらい稼ぐ」をそのまま実行すれば、二ヶ月後には難なく10万を手にしている姿は安易に想像できます。しかしなかなか予定通りに事が運ばないのが人生の難しいところ。当時仲良くしていた女子にこういうことを言われました。
「センゴク君、みんなで一緒にバイトせえへん?」
「みんな」とは当時つるんでいた複数人の男女。工場で黙々と働くよりかははるかに楽しそうなのはこれまた安易に想像できますが、完全に原付への夢を断ち切るわけにはまいりません。何のバイトなのかまず確認しました。
「ピザ屋さんのチラシ配りやねん。日当6000円で楽勝らしいよ。」
「日当6000円・・・ということは・・・」と即座に暗算を始め、下記のような金額をはじき出しました。
- 6000円×5日間×5週間=150000円
「いける、いけるぞ。」と小さくガッツポーズをし、「どっち行っても10万がカタイんやったら女子とチラシ配りや!」と意気込み、Mの工場への誘いを断ることにしました。
全てこの通りにいけば、外から見ると「アリとキリギリス」に近い状態に見えますが、実際は「職業選択に失敗したアリ(僕)と成功したアリ(M)」となってしまうのです。
崩れ去った「10万円計画」
ヨコシマな道を選んだ人間には、大体落とし穴が待ち構えているというのが世のセオリー。まずピザ屋さんの「ポスティングスタッフ」ですが、配った枚数に日当が比例する歩合制。1枚配ると4円がいただける仕組みで、MAXが1600枚。これを一日で配りきれば6400円がもらえ、それ以下だと枚数に応じて減ります。
事前に6000円と聞いていましたので当然1600枚配るものだと思い「さぁ忙しくなるぞ」とどこかで聞いた台詞を思い浮かべていたわけですが、実際は僕の体がヒョローく見たのか
「あ、センゴク君は800枚ね。場所はここ。」
と言われながら、冷たーく「800」と書かれた紙が張られたボストンバックをドンと置かれ、「さぁ行ってこい」的な目をされます。まぁ実際行くとですね、これが結構しんどいわけですよ。地の利がない場所を配るのは効率的に配れないってことですし、真夏の昼間ですから体力の消耗も半端じゃないんですよね。
そうこう行っている間に一日が終わり、店に戻るとポスティングスタッフの方々は既に帰宅したと店長さんに言われ、「マジで・・・」と驚きながらも疲れているので店の椅子にドッカリ座りこみました。そして店長さんに言われた言葉は
「知ってると思うけどチラシ配りは土日だけやから、また来週もよろしく。」
いや、知りませんでした。というかロクに話を聞いていなかったのだと思います。消耗し切った体力で給料を計算したところ、下記の悲しい金額が叩き出されました。
- 4円×800枚×2日×5週間=32000円
30000円じゃあロクな原付が買えません。ただ、もう夏休みは始まっており今から別のバイトを探すのは難しく、一度受けた仕事を安易に断る勇気も無かったのでこのままチラシ配りのバイトを続けることにしました。
そして、「みんな」でチラシを配ることはなく夏が終わりを迎えたのです。
差がついた夏バイトの結果
結局続けたバイトで手に入れた額は「3万円」。無いよりはマシですが、三人の諭吉達を見るたびに「はぁ・・・」とため息が出ます。自室でそうやってヘコんでいると自宅の電話がなったので取ると声の主は友人M。(当時ケータイは一部の人だけが持ってました)
内容は「今から遊ぼう」とよくあるもので、ヒマだったワタクシは了承。こちらに来てくれるとのことだったので、しばし待つこと10分。
「ブーンブンブン・・・・ブーンブン」
「外で変な音がなっとる」と思いベランダに出ると、そこには原付を乗って颯爽と現れた友人M。それを一目見たときに色々な思いが交錯し、最終的に僕の心に残ったのは
というオモイ。仲がよい友人が原付に乗ってくると、一気に現実味が帯びますしより一層欲しくなります。購入に至る経緯はそれとなく聞き、一応3万円では買えないのかと聞いてみましたが、それは無理だと言われたので断念。
「まぁ・・・買えないのであれば仕方あるまい」と割り切り、別途欲しかったギターを購入。これはこれで別によかったのですが、音がするので一応親に買ったことだけは言っておくかと父に報告に行くと
「何で勝手に買うんや。買う前に一言言わなアカンやろ。」
と微妙にお怒り。自分で稼いだお金で特に何の害もないギターを買って何が悪いのか全く理解できず、さすがに腹が立ったので話の途中でしたが立ち去りました。
「何なんだ、あのオッサンは。」とワタクシも軽くお怒りになり、友人に愚痴を聞いてもらったりしていると
「ギターはまぁいいけどさ、原付はさすがに事前に言っといた方がいいやろな」
とアドバイスをもらい、我に返りました。ただこんな父です。とても理解を得れるとは思えません。実際にバイクいいなぁ・・・とボヤいていると「バイクは危ない。やめなさい。」と言うのみ。本人は乗ったことがないので説得力がなく、僕も納得ができないわけですが、彼がyesといわない限り買えないのも事実です。
しかしどうしても欲しい気持ちは消えてくれませんので、とりあえずお金だけは貯めておくことにしようと思い、冬休みバイトでまたなぜか三万円を得て年を越しました。
「禁止」と「無視」と「隠密」と
冬バイトはスーパーの品だし、春バイトは特に見つからなかったので無し。冬に稼いだお金はギター用品やゲームなどに無くなり文無し。お年玉の類は実は全て中型二輪免許用に置いていましたので、一切手は付けられません。もちろん原付を買える額には達してなかったので、使いようがなかったわけですが^^;
そこで思い出したのが昨年Mが勤めていた工場。高校二年生となったワタクシはもう夏はあそこで働くのだと決めていました。Mに聞いてみるとバイトはずっと募集しているみたいで短期でもOKというスタンスとのこと。実際に去年Mは10万弱稼いで7万の原付を買っていたので、実績も十分。さらに原付免許も既に取っていたのであとはお金だけです。
高校3年になるまでは短期バイトOKだったので、「よしよし、今年こそは買うぞー。」と意気込み、「許可は貯めてから考えよう。10万あって損はなし」と微妙に自分をごまかしました。
そして夏前。父に夏休みはバイトすると告げると
「オマエそろそろ受験勉強せなアカンやろ。バイトはアカン。」
と有無も言わさず「バイト禁止」の御触れが出ました。さすがに「高校二年までバイトしてもエエって言うてたやんか。」と反発しましたが、「アカン」の一言。昔から男の約束やという言葉を多用する父で、高校二年までは長期はダメだが短期ならOK、という言葉もその範疇だったはずが、ここに来て無かったことになるとは予想外。
薄っすらと大学に行きたいとは思い始めていましたが、いい大学に行こうと思うほど頑張る気力がなかったので、高校二年の冬あたりからやり始めようと思っていた意識レベルですから、もうこの言葉には腹が立つという状態では済まされないぐらい気持ちが荒れました。(モノにあたる程度でしたけどね^^;)
そもそも「受験勉強」で全てを片付けていいのか、あの「約束」は何だったのか、意見を翻したら理由ぐらい言え、などなど消化しきれない思いが心にドッカリ居座ってしまい、父の顔を見るたびに「イラッ」とくるところまで来てしまいました。
「アカン、(父と)喋るとイライラしてしまう。」
と思った僕は、そこから大学合格まで言葉を交わすことを止めました。それと同時にもはや許可などもらわん、内緒で原付買ってやるという思いが芽生え、夏バイトの面接に向かうのでした。
次は購入記その3「緊張走る高2の夏バイトと資金の行方」です。
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